2019/10/25

【ヒヤリハット・危険回避】企業が人命を守るには危険を知ることから~危険予知訓練(KYT)を行う方法・手順~

前回までお話ししたヒヤリハット・危険回避のなかでハインリッヒの法則・バードの分析の内容と危険感受性について少しお話しました。

その対策法として今回は危険予知訓練(KYT)を行う方法・手順について詳しくお話ししていきたいと思います。


危険予知訓練とは

 
危険予知訓練は、作業や職場にひそむ危険性や有害性等の危険要因を発見し解決する能力を高める手法です。
ローマ字のKYTは、危険のK、予知のY、訓練(トレーニング)のTをとったものです。

危険予知訓練は、もともと住友金属工業で開発されたもので、中央労働災害防止協会が職場のさまざまな問題を解決するための手法である問題解決4ラウンド法と結びつけ、さらにその後、旧国鉄の伝統な安全確認手法である指差し呼称を組み合わせた「KYT4ラウンド法」としたものが標準とされています。

危険予知訓練(KYT)を実践する意義

 
・安全を確認するための手法
KYTとは、危険に関する情報をお互いに寄せ集め、話し合って共有化し合い、それを解決していく中で、危険のポイントと行動目標を定め、危険に対する感受性や問題解決能力を高めます。作業の要所要所で指差し呼称を行うことにより、集中力を高めるとともに危険意識を高め、安全を確認して行動するための手法であるといえます。
また、そのための日常的な訓練です。


・危険情報を潜在意識に叩き込む
人間は生まれてからずっと一定の学習の過程を経ていくが、その結果、人間の行動はほとんどが習慣で、無意識に判断し、体の方が自然に動いています。人間は深く潜在意識に支配されているということです。それだけに意識下に危険に対する情報を送り込み、それを潜在意識に叩き込んで新しい習慣にし、自然に意識させ新しい習慣にしていくことが重要です。


・危険のポイントと行動目標を指差し呼称
意識・習慣はいったん植えつけられると、なかなか消えません。そして、誤まった知識でも正しいものと信じてしまうと体はそれに従って無意識に反応してしまいます。
 

KYTの場合、職場の仕事に通じたいわばプロ同士が練りに練って寄せ集めた危険のポイントと行動目標であり、これ以上正しいものはありません。したがって、KYTで危険のポイントと行動目標を指差し呼称で体が無意識に反応するぐらいにしっかりと意識下に叩き込んで、作業の要所要所で指差し呼称で顕在化していくことが重要です。


KYTは作業監督・管理する立場の人間だけでなく、実際の作業を行う者がどのような危険が考えられるか、実際に起きた軽微な危険体験に基づきその危険に対してどのような対策が必要かをチームとして問題解決に取り組み行動・習慣化させて皆が同じレベルで危険に対する感受性を高めることにあります。


では危険予知訓練ではどのような話し合い、訓練が必要か確認していきましょう。

危険予知訓練 4ラウンド法の手順・進め方

 
KYTの基礎手法であるKYT基礎4ラウンド法による危険予知訓練の進め方は、次表のとおりです。

ラウンド・危険予知訓練の4ラウンド・危険予知訓練の進め方

・1R
「どんな危険がひそんでいるか」
イラストシートの状況の中にひそむ危険を発見し、危険要因とその要因がひきおこす現象を想定して出し合い、チームのみんなで共有する。

・2R
「これが危険のポイント」
発見した危険のうち、これが重要だと思われる危険を把握して○印、さらにみんなの合意でしぼりこみ、◎印とアンダーラインをつけ「危険のポイント」とし、指差し唱和で確認する

・3R
「あなたならどうする」
◎印をつけた危険のポイントを解決するにはどうしたらよいかを考え、具体的な対策案を出し合う

・4R
「私達はこうする」
対策の中からみんなの合意でしぼりこみ、※印をつけ「重点実施項目」とし、それを実践するための「チーム行動目標」を設定し、指差し唱和で確認する
 

危険予知訓練(KYT)が目指すもの

 
KYTとは、危険を危険と気付く感受性をミーティングで鋭くし、危険に対する情報を共有し合い、それをミーティングで解決していく中で問題解決能力を向上し、作業行動の要所要所で指差し呼称を行うことにより集中力を高め、チームワークで実践への意欲を強める手法です。

・感受性を鋭くする

・集中力を高める

・問題解決能力を向上させる

・実践への意欲を強める

・安全先取り職場風土づくり

危険予知訓練は、「先取り的」「参加的」「ゼロ災」職場風土づくりをめざしています。KYTのめざすところは、マナーの良い職場(企業)風土(体質)を、問題(危険)の先取りと問題解決に対して強いものにするところにあります。
危険を予知・予測し、安全を先取りする感受性やチームワークは、お互い仲間の安全を守るなど一層チームとして強固なものになりすべて自主的な問題解決に及びます。
働く仲間


KYTの安全運動は、明るく前向きに話し合いができるようにした点にあります。
その話し合いの中で職場の人間関係も、雰囲気も明るくなり、チームワークもよくなり、職場風土が変わっていく。職場風土がそうなって、はじめてKYTが定着したといえます。